悪天の中、今年の東北詣では朝日連峰の以東岳に行ってきた。 前回の朝日連峰は大朝日岳周辺だったので以東岳から縦走案もあったが悪天の予報を前に気分も萎えて大鳥池からの往復にした。しかも2泊と言うのんびりペース(^^;)
金曜の夜仕事を終えてから長野を出発。途中新潟の燕三条にて友人を拾う。山形の鶴岡市には夜中の2:30頃着き、仮眠。
朝になり、いつも山形方面の山行でお世話になっている地元のBUNさんに起こされる。何と朝の弁当まで用意してくださっていた(T_T) ありがたや。本当はBUNさんも一緒にとお誘いしたかったがお仕事があるとのことで、登山口入り口への道案内と帰りの温泉を教えていただき別れる。鶴岡市内から大鳥集落を経て登山口の泡滝ダムまで40kmもある。朝日連峰の奥深さを改めて知る。
登山口までの道は舗装はしてないがフラットで乗用車でも問題なさそう。 ただ悪天候なので帰りに崩れてないか心配ではある。 泡滝ダムは8:00出発。すぐに大鳥川の峡谷沿いの水平道に入る。
(登山道入り口)
足下は切り立っていてまるで黒部の谷の様だ。雨が降っているがブナを主体とした森の中の歩きは気持ちいい。今年はブナの実が豊作らしく林床には殻が沢山落ちていてブナの芽もいっぱい。動物たちも喜んでいるだろうな・・
(ブナの芽)
ただ大鳥川下流部は葉の色が茶色く変色しているのが目立つ。BUNさんに教えていただいたが「ウエツキブナハムシ」と言う害虫が去年に続き今年も大発生との事。今後が心配である。
沢沿いの森の道で湧き水も豊富で水場には困らない。美味い水を飲みながら初日は4時間の歩きで終わり。大鳥池畔の大鳥小屋(タキタロウ山荘)に泊まる。素泊まり1500円。
時間はたっぷりあるので大鳥池(池と言うには大きい、湖と言ってもいいくらい)の周辺を散歩したり小屋で昼寝したりとゆっくり過ごす。
(大鳥池)
谷間なので携帯も届かずラジオも入らない。ここから目指す以東岳が見えるはずだがずっとガスの中であった。夕方になると土曜日なので縦走を終えて下山して来た人、これから縦走する人と結構な賑わいになってきたが100人収容の小屋なので余裕であった。炊事は寝床の横でOKなのが楽だった。標高は1000mにちょっと足りないくらいの場所なのでこの日はシュラフカバーだけで寝た。
翌朝4時起床。青空も見えていて期待させられる。天気予報の確認も出来ないので自分で見た空模様で判断するしかないがここまで来たら行くしかないだろう。大鳥池から以東岳へは二つのコースがあるが花が多そうなオツボ峰経由で行くことにした。直登コースより時間がかかるが今日も以東岳までの4時間だけなので全く問題なし。
最初のブナ林の登りは急で汗がどっと出る。蒸し暑い。それも最初の400mの登りだけでやがて森林限界に飛び出す。相変わらずガスが多くて景色は見えないがここで劇的に植生が変化し、高山帯に変わる。ブナ帯から針葉樹林帯を経ないでいきなり高山帯になるのが東北の日本海側の山の特色だ。今まで汗ダラダラで疲れていたのが風が吹き渡る森林限界のお花畑である。疲れも吹き飛ぶ(^^) 最近まで雪が残っていたらしい斜面には一面のチングルマ、反対の斜面には見たかったピンクのヒメサユリが黄色いニッコウキスゲと仲良く咲いていて感激。
(チングルマ)
(ヒメサユリとニッコウキスゲ)
ここから更に100m登るとタカネマツムシソウの大群落。ここのマツムシソウは色が濃い。いつも見慣れたはずのハクサンフウロも色が濃い。
(タカネマツムシソウ)
(ハクサンフウロ)
更にオツボ峰手前の水場があるので寄り道すると雪渓の下に白いヒナザクラの大群落と花花花!で天気悪くても来た甲斐があったと思える。時間があるのんびり山行なので寄り道も悪くない。更に登るとオオバギボウシの群落、マツムシソウの群落と入れ替わるようにハクサンイチゲも登場。以東岳、花の名山だったんだと今更ながら気付く(^^;)
(ヒナザクラ)
オツボ峰から先は小さいピークをいくつも越えていくが途中花崗岩の切り立った岩場もあって中々変化に富んで楽しい。
ハイマツ帯とこうした岩場を歩いているとここが1700mちょっとの山だとはとても思えない。以東岳に着くがガスで真っ白なのですぐに下る。以東小屋は山頂から5分も下ると現れた。小屋に入ると待ってましたとばかり土砂降りの雨風。いやラッキーでした。
(以東小屋)
以東小屋の管理人さんは我々が入った時はいかにも山小屋のオヤジさんだったのだがいつの間にか20歳くらいの女性に変わっていてびっくり。 この小屋は麓の朝日屋さんの管理らしいが管理人さんは何日か交代でやっておられるのだそう。この女性は山形大学の学生さんでこの大学のワンゲル?の伝統で毎年管理人を努めることになっているとの事だった。今年で2年目とのことで定時無線連絡などの様子もしっかり板に付いていた。
(管理人さんと)
さて外も大雨なので昼寝していたが小降りになったので水場まで偵察に行く。下り15分とかなり降りる。小屋の直下の雪渓下にも水場があるが先ほどの大雨で濁ってしまったのでNG。更に下って湧き水の水場まで行くとさすが湧き水、全く水量も増えず綺麗な水を保っていた。
水場は小屋から往復30分。相変わらず天気が悪いので自炊の支度をしていたが気になって外を見るとすっかり雨も上がって遠くが見通せる様になってきた。今日が初日の管理人さんも喜んでいる。私はカメラを持って外に飛び出して、その勢いでそのまま以東岳山頂へ直行(^^)
高い雲があって青空は無いが360°の展望を楽しむ。東は尖った大朝日岳への主脈が見渡せる。時計回りに見える山を列挙しよう。まず磐梯山。そして次に見えてくるのが膨大な飯豊連峰。雪渓が何本か見えるが一番北にあるのが石転沢雪渓だろう。その北には新潟平野、日本海、更には佐渡島、粟島。北には庄内平野、鶴岡市街。鳥海山も見えてきた。そして近くに月山。
(大朝日岳方面)
(新潟平野と海)
(磐梯山)
(月山)
(鳥海山)
(飯豊連峰)
この天気でこれだけ見えたのだからもう言うこと無い。この状態は夜までもってくれて鶴岡市の夜景と海の漁り火も見えた。そして寝ようとシュラフに潜り込んだら階下で管理人さんの悲鳴?(^^;)とタマヤ〜の声。
慌てて外を見ると鶴岡市で開催されている花火大会の様子が手に取るように見えたのであった。 同宿の人達も全員窓から顔を出して花火見物となった。
(以東小屋内部、この日の宿泊者は5人だけ) |
(鶴岡市赤川の花火大会) |
最終日、今までとは違って長丁場ではある。これが普通の一日の歩く距離だが・・・
朝から雨で気が滅入る。最短ルートで直登コースを下るが大雨で下着までびっしょりで参った。道も川の様で歩きにくい。大鳥池手前の沢の徒渉が増水して心配であったが何とか渡る。大鳥池畔の道は意外とアップダウンがあり時間がかかる。水面すれすれの所をヘツる所もあって緊張。大鳥小屋には8:00頃着。昨日の以東小屋の交代で降りた管理人さんがいて挨拶をする。下からも昨夜の好天が見えた様子で良かったねと言ってくださる(^^) ここまで来ると雨も上がり日も差して暑くなってくる。蝉も鳴き出して余計暑く感じるが豊富な水場でノドを潤しながらなので苦にならない。登山口12:00着。鶴岡の街に出てBUNさんに下山の報告メールを送り、櫛引温泉「ゆータウン」に入る。鉄分が多い茶色い湯であった。400円。大窓からは鳥海山が見えて中々いい場所にある。
ここで遅い昼食を済ませて長野へ向かう。途中で寝てしまい長野着23:00。 悪天の山行だったが花や展望に恵まれ、充実度100%であった。
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