雪の降った日
あしあとは ほんのひととき のこる
どこかですれ違ったかもしれない
だれかのあしあと
昔いっしょに遊んだかもしれない
友のあしあと
じゃれあいながら我先にと駆け出したかもしれない
兄や姉のあしあと
待って待ってとあとを追いかけたかもしれない
妹や弟のあしあと
雪をかきわけ我が家への道をつくったかもしれない
父や母のあしあと
杖の小さなてんてんを残したかもしれない
祖父や祖母のあしあと
戸口でしばし立ち尽くしていたかもしれない
好きだったあの人のあしあと
そして
あしあとは いつしか 消える
寒さに 新しい雪が 降りつもれば
暖かく 太陽が 顔をのぞかせれば
ゆるやかに 柔らかい雨が 降りしきれば
たとえ
踏みつけて消そうとしてしまわなくとも
あの あしあとも
この あしあとも
古の先達のあしあとも
今ここに立つ我のあしあとも
おなじように やがて 消えてゆく
どうか
あしあとを すくいあげて 凍らせないでください
どうか
あしあとを つけることを ためらわないでください
なぜならば
あしあとは
あなたの心の片隅に
ひっそりと のこっているのです
おなじように
あなたのあしあとを
心の片隅に ひっそりと のこしたい人が
すぐそばに いるのです
あしあとが
いつしか消えてしまうとわかっていても
星がまたたく わずかな時にあっても
『 雪のあしあと 』
mikan